2025/2026シーズンの冬の移籍市場は、例年に比べて「静かな立ち上がり」と見られていましたが、蓋を開けてみれば各国で特徴的な補強が相次ぐウィンドウとなりました。超大型移籍こそ少なかったものの、クラブの方向性をはっきりと示す実務的かつ戦略的な補強が多く、移籍金の総額以上に“質”が問われる市場だったと言えます。
プレミアリーグでは即戦力級ストライカーへの投資が行われ、ラ・リーガでは中長期を見据えた若手獲得が進行。一方でサウジ・プロリーグは引き続き強い存在感を示し、リーグ内外を巻き込む形で移籍市場に大きな影響を与えました。今回の冬の移籍は、各クラブが「今季の立て直し」だけでなく「次の数年」を明確に意識して動いていることがうかがえます。
本記事では、2025/2026シーズン冬の移籍市場における移籍金ランキングTOP10をもとに、それぞれの選手がどのような背景で移籍に至ったのか、そして新天地でどのような役割を期待されているのかを整理していきます。金額だけでは見えてこない、各移籍の狙いと意味を読み解いていきましょう。
2025/2026冬の移籍金ランキングTOP10
1位 アントワーヌ・セメンヨ(AFCボーンマス → マンチェスター・シティFC)
移籍金:7200万€(約122億4,000万円)
2025/2026シーズン冬の移籍市場で最大の注目を集めたのが、アントワーヌ・セメンヨのマンチェスター・シティ移籍です。ボーンマスで主力として活躍していたセメニョは、今季前半戦でもプレミアリーグ屈指の推進力を見せ、得点・チャンスメイクの両面で評価を高めていました。その結果、マンチェスター・シティが 7200万ユーロ という今冬最高額を投じて獲得に踏み切る形となりました。
セメンヨはスピードとフィジカルを兼ね備えたアタッカーで、サイドから中央への侵入や、カウンター局面での破壊力が最大の武器です。ボーンマスでは攻撃の軸として自由な役割を与えられていましたが、シティではより戦術的な制約の中でプレーすることが求められます。それでもペップ・グアルディオラ体制において、前線の運動量と縦への推進力を補完できる存在として期待は大きく、即戦力かつ将来性を兼ね備えた象徴的な補強と言えるでしょう。
2位 ヨルゲン・ストランド・ラーセン(ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズFC → クリスタル・パレスFC)
移籍金:4970万€(約84億4,900万円)
ヨルゲン・ストランド・ラーセンは、2025/2026シーズン冬の移籍市場において、プレミアリーグ内で最大級の注目移籍の一つとなりました。ウルヴァーハンプトンでセンターフォワードとして存在感を示していたラーセンは、フィジカルの強さと安定した決定力を武器に評価を高め、クリスタル・パレスが約4970万ユーロという高額な移籍金を投じて獲得しています。
ノルウェー代表でも主力を担うラーセンは、ポストプレーの安定感に加え、ゴール前での冷静さが特長で、攻撃の起点にもフィニッシャーにもなれるタイプです。ウルブズでは戦術的な制約の中で役割を果たしていましたが、パレスではより明確に得点源としての期待がかけられています。クラブにとっては残留争い、さらには中位定着を見据えた重要な補強であり、今冬の移籍市場を象徴する「即効性重視」の一手と言えるでしょう。
3位 ルーカス・パケタ(ウェストハム・ユナイテッドFC → CRフラメンゴ)
移籍金:4200万€(約71億4,000万円)
ルーカス・パケタの移籍は、2025/2026冬の移籍市場の中でも異色の存在と言えるでしょう。プレミアリーグで主力としてプレーしていたウェストハムから、母国ブラジルの名門フラメンゴへと移籍する形となり、移籍金は約4200万ユーロと、南米復帰としては極めて高額な取引となりました。
パケタはウェストハム在籍時、中盤の創造性を担う存在として攻撃を組み立て、得点やアシストだけでなく試合のテンポを支配する役割を果たしてきました。一方で、クラブの戦術的変化やチーム再編の影響もあり、シーズン途中での決断に至ったと見られています。フラメンゴにとっては、即戦力であると同時にクラブの象徴となり得る補強であり、国内外の大会で主導権を握るための大きな切り札です。
欧州から南米への“逆流”とも言える今回の移籍は、キャリア後半を見据えた選択であると同時に、南米クラブの資金力と影響力の高まりを示す象徴的な事例とも言えるでしょう。
4位 コナー・ギャラガー(アトレティコ・マドリード → トッテナム・ホットスパーFC)
移籍金:4000万€(約68億円)
コナー・ギャラガーは、2025/2026シーズン冬の移籍市場において、プレミアリーグ復帰を果たした注目のミッドフィルダーです。アトレティコ・マドリードでの在籍期間は決して長くありませんでしたが、強度の高い守備と運動量を武器に一定の評価を得ており、その実績を踏まえてトッテナムが約4000万ユーロを投じて獲得しました。
ギャラガーの最大の特長は、90分間落ちない運動量と前線からのプレッシング能力です。ボール奪取から素早く攻撃へ転じるスタイルは、テンポを重視するトッテナムのサッカーと高い親和性を持っています。アトレティコでは戦術的規律を学び、守備面での引き出しを増やしたことで、より完成度の高いボックス・トゥ・ボックス型MFへと成長しました。
トッテナムにとっては中盤の強度と安定感を底上げする狙いが明確な補強であり、即戦力としての起用が見込まれます。プレミアリーグの環境を熟知している点も大きな強みで、チームの競争力向上に直結する移籍と言えるでしょう。
5位 ブレナン・ジョンソン(トッテナム・ホットスパーFC → クリスタル・パレスFC)
移籍金:4000万€(約68億円)
ブレナン・ジョンソンは、2025/2026シーズン冬の移籍市場でトッテナムからクリスタル・パレスへと移籍し、プレミアリーグ内での大型取引の一つとなりました。スピードと推進力を武器とするアタッカーで、縦への突破力とカウンター局面での鋭さが高く評価され、パレスが即戦力として獲得に踏み切った形です。
トッテナムでは主にサイドアタッカーとして起用されていましたが、チーム内の競争激化もあり、安定した出場機会を得るには至りませんでした。一方で、出場した試合ではスプリント能力とゴール前への侵入で違いを見せており、潜在能力の高さは疑いようがありません。パレスではより明確な役割を与えられ、攻撃の軸として起用される可能性が高いと見られています。
若さとプレミアリーグ経験を兼ね備えたジョンソンの加入は、パレスにとって中長期的な戦力強化を見据えた重要な補強であり、環境の変化が飛躍につながるか注目されます。
6位 アデモラ・ルックマン(アタランタBC → アトレティコ・マドリード)
移籍金:3500万€(約59億5,000万円)
アデモラ・ルックマンは、アタランタでの活躍を経て、2025/2026シーズン冬にアトレティコ・マドリードへと移籍しました。セリエAでは鋭いドリブル突破と決定力を武器に攻撃の中心を担い、ビッグマッチでも結果を残してきたことが高く評価されています。移籍金3500万ユーロという額からも、即戦力としての期待の大きさがうかがえます。
ルックマンの特長は、サイドから中央へ切れ込む動きと、ゴール前での思い切りの良さです。アタランタでは比較的自由な役割を与えられていましたが、アトレティコではより組織的な守備と戦術理解が求められます。ただし、カウンター局面での爆発力はシメオネ監督の戦術と相性が良く、試合展開を一変させる存在となり得ます。
攻撃陣に多様性をもたらす補強として、ルックマンがリーガの舞台でどこまで適応できるかは、アトレティコの後半戦を占う重要なポイントとなりそうです。
7位 オスカー・ボブ(マンチェスター・シティFC → フラムFC)
移籍金:3120万€(約53億400万円)
オスカー・ボブは、マンチェスター・シティで将来を期待されていた若手アタッカーの一人ですが、出場機会を求める形でフラムへの移籍を選択しました。移籍金は約3120万ユーロと高額で、フラムにとってはクラブの本気度を示す大型補強となっています。
ボブはテクニックと判断力に優れた左利きのアタッカーで、狭いスペースでもボールを失わず、周囲と連動しながら攻撃を組み立てられる点が特長です。シティではペップ・グアルディオラの下で戦術理解を深めてきましたが、層の厚さから継続的な出場は難しく、実戦経験を積むことが課題となっていました。
フラムではより自由度の高い役割が期待され、攻撃の中心としてプレーする可能性もあります。プレミアリーグの中堅クラブで主力を担うことで、市場価値をさらに高められるかが注目される移籍であり、キャリアの分岐点となる一手と言えるでしょう。
8位 カデル・メイテ(スタッド・レンヌ → アル・ヒラル)
移籍金:3000万€(約51億円)
カデル・メイテは、リーグ・アンのスタッド・レンヌで中盤の主力として活躍した後、2025/2026シーズン冬にサウジ・プロリーグの強豪アル・ヒラルへ移籍しました。移籍金は約3000万ユーロと、冬市場としては高水準であり、アル・ヒラルが即戦力として強く評価していたことがうかがえます。
メイテはフィジカルの強さと守備範囲の広さを兼ね備えたセントラルMFで、ボール奪取から前線への展開までを一人でこなせるタイプです。レンヌでは中盤のバランサーとして安定したパフォーマンスを続け、対人の強さと空中戦でも存在感を発揮していました。派手さはないものの、チーム全体の完成度を高める役割を担える点が最大の強みです。
アル・ヒラルではスター選手を支える土台としての働きが期待されており、リーグ内外の大会での安定感向上に直結する補強と言えるでしょう。欧州からサウジへの移籍という点でも、今冬の市場動向を象徴する一例です。
9位 ジョージ・イレニヘナ(ASモナコ → アル・イテハド)
移籍金:3000万€(約51億円)
ジョージ・イレニヘナは、ASモナコで将来を嘱望されていた若手アタッカーであり、2025/2026シーズン冬にサウジ・プロリーグのアル・イテハドへと移籍しました。移籍金は約3000万ユーロと高額で、サウジ勢が若手タレントにも積極的に投資している姿勢を象徴する補強となっています。
イレニヘナはスピードと身体能力に優れたストライカーで、背後への抜け出しやゴール前での動き出しに鋭さを持つ選手です。モナコでは出場機会が限定的ながらも、出場した試合では将来性を感じさせるプレーを見せていました。一方で、即戦力としての完成度という点では課題も残しており、今回の移籍はプレータイム確保を重視した決断と見ることができます。
アル・イテハドではより中心的な役割が与えられる可能性が高く、結果次第では市場価値をさらに高めることも十分に考えられます。若さと将来性を含めた“先行投資型”の移籍と言えるでしょう。
10位 タティ・カステジャーノス(SSラツィオ → ウェストハム・ユナイテッドFC)
移籍金:2900万€(約49億3,000万円)
タティ・カステジャーノスは、ラツィオでの安定したパフォーマンスを経て、プレミアリーグのウェストハムへと移籍しました。移籍金は約2900万ユーロで、今冬のランキングでは10位に位置するものの、即戦力としての期待値は非常に高い補強です。
カステジャーノスは前線で体を張れるストライカーで、ポストプレーとゴール前での決定力を兼ね備えています。ラツィオでは試合展開に応じて役割を変えながら得点に絡み、堅実な数字を残してきました。派手さはないものの、計算できるFWとして評価されており、プレミアリーグのフィジカルな環境にも適応可能と見られています。
ウェストハムにとっては、前線の安定感を高める現実的な補強であり、シーズン後半戦での得点力向上に直結する存在となるでしょう。堅実さが際立つ移籍として、今冬の市場を締めくくる一件です。
まとめ
2025/2026シーズン冬の移籍市場を振り返ると、今冬は単なるテコ入れではなく、クラブの中期的な戦略が色濃く反映された移籍が多かったことが分かります。移籍金ランキング上位には即戦力と将来性の両方を兼ね備えた選手が並び、補強の意図が明確なケースが目立ちました。
特にプレミアリーグやラ・リーガでは、ポジションを限定したピンポイント補強が進み、短期間での戦力向上を狙う動きが顕著でした。一方でサウジ・プロリーグは依然として強い資金力を背景に存在感を示しており、ベンゼマのようなビッグネームの移籍はリーグ全体の競争力と注目度を押し上げています。今後も欧州主要リーグとサウジ勢の関係性は、移籍市場を語るうえで欠かせない要素となりそうです。
また、1000万〜2000万ユーロ帯の移籍が多くランクインしている点も今冬の特徴です。これは市場全体がやや慎重な姿勢を保つ中で、「確実に使える戦力」「伸びしろのある若手」への投資が重視されていることの表れと言えるでしょう。大型補強よりも、成功確率の高い移籍を積み重ねるクラブが増えている印象です。
今後、これらの移籍がシーズン後半戦にどのような影響を与えるのか、そして夏の移籍市場でどのクラブが次の一手を打ってくるのかにも注目が集まります。冬の移籍市場は静かに終わったように見えて、実は次の大きな動きを予感させる重要な布石だったのかもしれません。
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