左サイドバック(LSB)は、現代サッカーにおいて攻守両面で極めて重要な役割を担うポジションです。かつては「守備のスペシャリスト」として相手ウイングを封じ込める役割が中心でしたが、近年では攻撃面での貢献度が大幅に求められるようになりました。特に、サイドからのオーバーラップや正確なクロス、さらにはビルドアップへの関与など、多彩なスキルが必要とされるため、クラブはこのポジションに優秀な選手を確保するための投資を惜しみません。
また、戦術の多様化により、左サイドバックにはさまざまなスタイルが存在しています。例えば、相手陣内深くまで攻め上がる「アタッキング・フルバック」、中央に絞ってビルドアップに関与する「インバーテッド・フルバック」、さらには守備を重視してカウンターに備える「ディフェンシブ・フルバック」など、チームの戦術や求められる役割によってプレースタイルが大きく異なります。このポジションで活躍する選手たちは、フィジカルの強さ、スピード、戦術理解力、そして精度の高いパスやクロスを兼ね備えていることが求められます。
今回は、Transfermarktの最新データをもとに、世界で最も市場価値が高い左サイドバックのランキングを紹介します。ランキング上位に名を連ねる選手たちは、現代サッカーにおけるサイドバック像を大きく変え、攻撃と守備の両面でチームの勝利に貢献する存在です。彼らがどのようなプレースタイルで市場価値を高めているのか、その特徴とともに詳しく見ていきましょう。
市場価値ランキング – 左サイドバック編
9位 アレハンドロ・グリマルド(バイエル・レバークーゼン)
4000万€(68億円)
アレハンドロ・グリマルドは1995年9月20日生まれのスペイン・バレンシア出身のサッカー選手で、現在はブンデスリーガのバイエル・レバークーゼンに所属しています。サッカーを始めたグリマルドは、2008年にバルセロナの下部組織「ラ・マシア」に移籍し、15歳でバルセロナBにデビュー。トップチーム昇格の機会に恵まれなかったものの、2015年にポルトガルのベンフィカに移籍。その後、ベンフィカで197試合に出場し、19ゴールを記録。4度のリーグ優勝に貢献しました。2023年には契約満了に伴い、ブンデスリーガのバイエル・レバークーゼンに加入。加入初年度から攻守両面で活躍し、チームの重要な選手となっています。グリマルドは攻撃的なプレースタイルが特徴で、正確な左足のキックやドリブル、ボール奪取能力に優れ、セットプレーのスペシャリストとしても知られています。2023-24シーズンには13アシストを記録し、アシスト王に輝き、同シーズンでは無回転フリーキックで得点を挙げるなどその精度を示しました。また、2023年にはスペイン代表に初招集され、国際舞台での活躍も期待されています。攻撃的なプレースタイルと高い技術を武器に、レバークーゼンおよびスペイン代表でのさらなる成長と活躍が期待されています。
9位 アンドレア・カンビアーゾ(ユヴェントスFC)
4000万€(68億円)
アンドレア・カンビアーゾは2000年2月20日生まれのイタリア出身ディフェンダーで、現在はセリエAのユヴェントスFCに所属しています。ジェノヴァの下部組織で育ち、2017年からセリエDのアルビッソラやセリエBのエンポリなど複数のクラブにレンタル移籍し経験を積みました。2021-22シーズンにジェノアでブレイクを果たし、2022年7月にユヴェントスへ完全移籍。加入初年度はボローニャに期限付き移籍したものの、1年でユヴェントスに復帰し、レギュラーとして活躍しています。身長182cm、体重77kgのカンビアーゾは、両足を使えるユーティリティープレーヤーであり、サイドバックとして攻守に貢献。攻撃時にはオーバーラップやクロスでチャンスを生み出し、守備時にはポジショニングとタックルで相手の攻撃を阻止します。さらに、戦術的柔軟性も備えており、複数のポジションをこなせるのが強みです。2025年1月にはマンチェスター・シティが100億円超のオファーを準備していると報じられましたが、ユヴェントスのスポーツディレクターは交渉の事実を否定。しかし、カンビアーゾの代理人は関心があることを認めており、移籍市場での動向に注目が集まっています。セリエDからトップクラブへと成長した努力家であり、今後もユヴェントスおよびイタリア代表での活躍が期待される選手です。
7位 リッカルド・カラフィオーリ(アーセナル)
4500万€(76億5,000万円)
リッカルド・カラフィオーリは2002年5月19日生まれのイタリア出身ディフェンダーで、現在はプレミアリーグのアーセナルFCに所属しています。8歳でASローマの下部組織に加入し、2018年にプロ契約を締結。その後、ジェノアへのレンタル移籍を経て、スイスのFCバーゼル、イタリアのボローニャFCでプレーし、2024年7月にアーセナルへ移籍しました。移籍金は最大4200万ポンド(約86億円)と報じられています。身長188cm、体重86kgのカラフィオーリは、センターバックと左サイドバックの両方をこなすユーティリティ性を持ち、正確な左足のキックと高い守備力を兼ね備えています。2024年8月にはオリンピック・リヨンとのプレシーズンマッチでアーセナルデビューを果たし、プレミアリーグ第2節アストン・ヴィラ戦で公式戦初出場。第5節のマンチェスター・シティ戦では移籍後初ゴールを決め、チームの勝利に貢献しました。イタリア代表としても各年代別代表を経て、2024年からA代表に選出され、UEFA EURO 2024ではセンターバックとしてプレー。その守備力とビルドアップ能力が高く評価されました。若くしてアーセナルの守備陣を支える存在となり、今後のさらなる成長と活躍が期待されています。
7位 デスティニー・ウドギー(トッテナム・ホットスパーFC)
4500万€(76億5,000万円)
デスティニー・ウドギーは2002年11月28日生まれのイタリア出身の左サイドバックで、現在はプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーFCに所属しています。エラス・ヴェローナの下部組織で育ち、2020年にトップチームデビュー。その後ウディネーゼへ移籍し、2021-22シーズンには35試合5得点、2022-23シーズンには33試合3得点を記録し、攻守にわたる活躍で評価を高めました。2022年8月にトッテナムと契約を結び、1年間のレンタルを経て2023-24シーズンから正式にチームに合流。同年8月のブレントフォード戦でプレミアリーグデビューを果たし、12月のニューカッスル戦で初ゴールを記録。12月には契約を2030年まで延長しました。ウドギーは爆発的な突破力とフィジカルの強さを活かした攻撃的なプレーが特徴で、サイドでの推進力と高精度のクロスでチャンスを生み出します。一方で守備面には改善の余地があり、今後の成長が期待されています。2023年10月にはイタリアA代表に初招集され、国際舞台での経験も積み始めました。2024年12月にはウルヴァーハンプトン戦でハムストリングを負傷し、チームの守備陣にとって痛手となりましたが、復帰後の活躍が期待されています。トッテナムとイタリア代表の将来を担う存在として、今後のさらなる飛躍が注目される選手です。
4位 テオ・エルナンデス(ACミラン)
5000万€(85億円)
テオ・エルナンデスは1997年10月6日生まれのフランス出身の左サイドバックで、現在はセリエAのACミランに所属しています。アトレティコ・マドリードの下部組織で育ち、2015年にBチームでプロデビュー。その後、デポルティーボ・アラベスへのレンタル移籍を経て2017年にレアル・マドリードへ完全移籍しましたが、定位置を確保できず、2019年にACミランへ移籍しました。ミラン加入後は攻撃的な左サイドバックとして活躍し、2021-22シーズンにはセリエA優勝に貢献。リーグのベストイレブンにも選出され、ヨーロッパ屈指のサイドバックとして評価されています。フランス代表には2021年に初招集され、UEFAネーションズリーグ優勝を経験。2022年のFIFAワールドカップでは準優勝に貢献し、大会を通じて高い評価を受けました。エルナンデスはスピードと攻撃力を兼ね備え、ドリブル突破やクロス精度に優れる一方で、守備面でも安定したパフォーマンスを発揮しています。2025年2月にはUEFAチャンピオンズリーグの試合で退場処分を受け、チームの敗退につながるなど課題も見られますが、コッパ・イタリアではチームの4強進出に貢献。今後もACミランおよびフランス代表の重要な選手としてさらなる飛躍が期待されています。
4位 アルフォンソ・デイヴィス(バイエルン・ミュンヘン)
5000万€(85億円)
アルフォンソ・デイヴィスは2000年11月2日生まれのカナダ出身の左サイドバックで、現在はブンデスリーガのバイエルン・ミュンヘンに所属しています。ガーナの難民キャンプで生まれ、5歳のときにカナダへ移住。2016年にバンクーバー・ホワイトキャップスでプロデビューし、その才能が注目されました。2019年にバイエルン・ミュンヘンへ移籍し、左サイドバックの主力として活躍。2020年にはチャンピオンズリーグ制覇を含む三冠達成に貢献しました。公式戦220試合に出場し、12ゴール34アシストを記録。スピードとドリブル能力に優れ、攻守両面で高いパフォーマンスを発揮する選手として知られています。2025年2月にはバイエルンとの契約を2030年まで延長し、レアル・マドリードなどへの移籍の噂を一蹴。カナダ代表としても活躍し、2017年に最年少でA代表デビューを果たして以来、チームの中心選手として国際舞台での経験を積んでいます。圧倒的なスピードを武器に相手ディフェンスを切り裂く突破力が特徴で、世界でもトップクラスのサイドバックとして評価されています。今後もバイエルン・ミュンヘンおよびカナダ代表でのさらなる成長と活躍が期待される選手です。
4位 アレハンドロ・バルデ(FCバルセロナ)
5000万€(85億円)
アレハンドロ・バルデは2003年10月18日生まれのスペイン出身の左サイドバックで、現在はFCバルセロナに所属しています。ギニアとドミニカ共和国の両親のもとバルセロナで生まれ、2011年に8歳でバルセロナの下部組織「ラ・マシア」に入団。各年代で成長を続け、2021-22シーズン終盤にトップチームデビューを果たしました。2022-23シーズンにはレギュラーに定着し、攻守両面での貢献が評価されています。スピードとフィジカルを兼ね備えたプレースタイルが特徴で、積極的な攻撃参加やクロス精度の高さが武器。2022年のカタール・ワールドカップではスペイン代表としてデビューし、4試合に出場。代表チームでも重要な存在となりつつあります。2024-25シーズンもバルセロナの左サイドバックとして活躍を続けており、攻撃面ではアシストを量産し、守備面でも安定感を増しています。最近の試合ではビルドアップへの関与が増え、戦術理解度の向上が見られます。若くしてバルセロナの左サイドを担う存在となったバルデは、今後さらなる成長が期待される選手であり、クラブと代表の両方での活躍が注目されています。
3位 ヌーノ・メンデス(パリ・サンジェルマンFC)
5500万€(93億5,000万円)
ヌーノ・メンデスは2002年6月19日生まれのポルトガル出身の左サイドバックで、現在はリーグ・アンのパリ・サンジェルマンFC(PSG)に所属しています。スポルティングCPのユースアカデミーで育ち、2020年にトップチームデビュー。2020-21シーズンにはリーグ優勝に貢献し、その活躍が評価され2021年にPSGへレンタル移籍、翌年には完全移籍しました。スピードと攻撃力を兼ね備え、高いボールコントロールとクロス精度を武器に左サイドを駆け上がる選手として評価されています。守備面でも安定したパフォーマンスを発揮し、攻守両面での貢献が大きい選手です。ポルトガル代表としても2020年にA代表デビューを果たし、UEFAネーションズリーグやワールドカップ予選などでプレー。2025年2月現在、PSGの主力選手としてリーグ戦16試合に出場し、2アシストを記録。2024年12月にはマンチェスター・ユナイテッドが獲得に関心を示していると報じられましたが、具体的な移籍の動きは確認されていません。若くしてクラブと代表の両方で活躍するヌーノ・メンデスは、今後のさらなる成長と飛躍が期待される注目の選手です。
2位 フェデリコ・ディマルコ(インテル・ミラノ)
6000万€(102億円)
フェデリコ・ディマルコは1997年11月10日生まれのイタリア出身の左サイドバックで、現在はセリエAのインテル・ミラノに所属しています。インテルの下部組織で育ち、2014年にトップチームデビュー。その後、アスコリ、エンポリ、シオン(スイス)、パルマ、エラス・ヴェローナなどへのレンタル移籍を経験し、2021年にインテルへ復帰しました。以降、レギュラーとしてチームの左サイドを支え続けています。ディマルコは精度の高いクロスやセットプレーでの得点力が特徴で、特に直接フリーキックからのゴールが多く、攻撃面でも大きな貢献を果たしています。守備面でも安定したパフォーマンスを発揮し、攻守両面で高い評価を受けています。イタリア代表としても各年代別代表を経て、2022年にA代表デビュー。UEFAネーションズリーグやEURO予選などでプレーし、代表チームの重要な戦力となっています。2025年3月には直接フリーキックからゴールを決め、「キャリアの中でもトップ3に入る」と評価。インテルはディマルコとの契約延長を準備しており、年俸は現在の約2倍になる見込みです。クラブと代表の両方で成長を続けるディマルコの今後のさらなる活躍が期待されています。
1位 ヨシュコ・グヴァルディオル(マンチェスター・シティFC)
7500万€(127億5,000万円)
ヨシュコ・グヴァルディオルは2002年1月23日生まれのクロアチア出身のセンターバックで、現在はプレミアリーグのマンチェスター・シティFCに所属しています。ディナモ・ザグレブのユースアカデミーで育ち、2019年にトップチームデビュー。その後、2021年にRBライプツィヒへ移籍し、2シーズンで公式戦87試合に出場し、5ゴールを記録。ライプツィヒではDFBポカール(ドイツ杯)を2度制覇するなど、着実に成長を遂げました。2023年8月にはマンチェスター・シティと5年契約を結び、移籍金は1億ユーロ(約150億円)と報じられ、ディフェンダー史上最高額の一つとなりました。グヴァルディオルは左利きで、センターバックだけでなく左サイドバックとしてもプレー可能。優れたビルドアップ能力とフィジカルの強さを兼ね備え、攻撃面でも積極的に関与します。クロアチア代表としても活躍し、2022年のカタール・ワールドカップでは全試合に出場し、チームの3位入賞に貢献。マンチェスター・シティ加入後はプレミアリーグの強度に適応し、守備の安定感とビルドアップ能力で不可欠な存在となっています。直近の試合では得点を重ねるなど攻撃面での貢献も増加しており、今後さらなる成長が期待される選手です。
まとめ
今回の左サイドバック市場価値ランキングは、このポジションの進化と多様性を象徴する結果となりました。かつては主に守備の役割を担うポジションでしたが、現代サッカーでは攻撃参加の重要性が増し、チームの戦術に大きな影響を与える選手が高く評価されています。
1位に輝いたのは、マンチェスター・シティFCのヨシュコ・グヴァルディオル。市場価値は7500万ユーロ(約127億5,000万円)に達し、世界最高の左サイドバックとしての評価を確立しました。もともとセンターバックとしてもプレーできる守備力の高さに加え、ボール保持時の安定感、そしてビルドアップ能力がペップ・グアルディオラの戦術に適合し、マンチェスター・シティの戦術的な要として機能しています。
2位には、インテル・ミラノのフェデリコ・ディマルコ(6000万ユーロ/約102億円)がランクイン。卓越したクロス精度と攻撃的なプレースタイルで、インテルの攻撃に欠かせない存在となっています。守備だけでなく、得点に絡むプレーも増えており、攻撃型サイドバックとしての市場価値を高めています。
3位には、パリ・サンジェルマンのヌーノ・メンデス(5500万ユーロ/約93億5,000万円)。スピードとドリブル突破を武器に、サイドからの攻撃を活性化させる選手であり、守備面でも安定したパフォーマンスを発揮しています。まだ若く、今後の成長によってさらに市場価値が上昇する可能性がある選手の一人です。
4位には、テオ・エルナンデス(ACミラン)、アルフォンソ・デイヴィス(バイエルン・ミュンヘン)、アレハンドロ・バルデ(FCバルセロナ)の3名が5000万ユーロ(約85億円)で並びました。テオ・エルナンデスは攻撃的なプレースタイルでACミランの攻撃を活性化し、アルフォンソ・デイヴィスは爆発的なスピードと推進力でバイエルンの攻撃を支えています。バルデはFCバルセロナで次世代のサイドバックとして成長を遂げており、今後のさらなる飛躍が期待されます。
このランキングからもわかるように、現代の左サイドバックには、単なる守備のスペシャリストではなく、攻撃の組み立てや得点への関与が求められるようになっています。また、若手選手の台頭が顕著であり、将来性のある選手の市場価値が高騰していることも特徴的です。さらに、プレースタイルの多様化により、攻撃的なスタイルの選手と守備的な安定感を持つ選手が市場価値に大きな影響を与えていることが見て取れます。
今後、これらの選手がどのように成長し、市場価値がどのように変動していくのかは大きな注目ポイントです。新たな才能が台頭するのか、それとも現在のスター選手たちがその座を守り続けるのか。左サイドバックというポジションのさらなる進化と、それを支える選手たちの活躍から、今後も目が離せません。
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