右サイドバック(RSB)は、現代サッカーにおいて戦術的な柔軟性が求められるポジションの一つです。かつては守備のスペシャリストとして相手のウインガーを封じることが主な役割でしたが、近年では攻撃参加の頻度が増し、ゲームメイクにも関与する重要なポジションへと変化しています。スピードを活かしたオーバーラップ、正確なクロス、時には中盤に入ってパスワークを助ける動きなど、右サイドバックのプレースタイルは多様化し、現代サッカーにおける「最も進化したポジションの一つ」と言われるようになっています。
特に近年の戦術の進化により、右サイドバックには大きく3つの役割が求められています。
- アタッキング・フルバック:攻撃時に高い位置を取り、クロスやシュートで直接ゴールに絡むタイプ。
- インバーテッド・フルバック:中盤へ絞り、ビルドアップやゲームメイクをサポートするタイプ。
- ディフェンシブ・フルバック:堅実な守備を優先し、カウンターへの対応力が高いタイプ。
今回は、Transfermarktの最新データをもとに、世界で最も市場価値が高い右サイドバックのランキングを紹介します。ランキング上位に名を連ねる選手たちは、守備力だけでなく、攻撃の起点としての貢献度や戦術的な適応力も兼ね備えています。彼らがどのようなプレースタイルでチームを支え、市場価値を高めているのか、詳しく見ていきましょう。
市場価値ランキング – 右サイドバック編
9位 ティノ・リヴラメント(ニューカッスル・ユナイテッドFC)
3500万€(59億5,000万円)
ティノ・リヴラメントは2002年11月12日生まれのイングランド出身の右サイドバックで、現在はプレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドFCに所属しています。チェルシーの下部組織で育ち、2020-21シーズンにはアカデミーの年間最優秀選手に選出。しかしトップチームでの出場機会がなく、2021年8月にサウサンプトンへ移籍しました。初年度は公式戦28試合に出場し、1得点を記録するも、2022年4月に前十字じん帯を負傷し長期離脱。2023年8月にはニューカッスル・ユナイテッドと5年契約を締結しました。スピードと攻撃力を兼ね備え、高いボールコントロールとクロス精度を持つ選手で、守備面でも安定したパフォーマンスを発揮。イングランドの各年代別代表を経験し、2024年11月にはA代表デビューを果たしました。2025年2月現在、ニューカッスルの主力として活躍し、マンチェスター・シティが補強候補として関心を示していると報じられています。クラブと代表の両方で成長を続けるリヴラメントの今後のさらなる飛躍が期待される選手です。
9位 マロ・ギュスト(チェルシーFC)
3500万€(59億5,000万円)
マロ・ギュストは2003年5月19日生まれのフランス出身の右サイドバックで、現在はプレミアリーグのチェルシーFCに所属しています。オリンピック・リヨンの下部組織で育ち、2021年にトップチームデビュー。その後、2023年1月にチェルシーと契約を締結し、2022-23シーズン終了まではリヨンにレンタル移籍し、同年夏に正式にチェルシーへ加入しました。グストはスピードと攻撃力を兼ね備えた右サイドバックで、ボールコントロールとクロス精度の高さが武器。チェルシーではビルドアップ時に中盤へ絞る「偽サイドバック」の役割もこなし、戦術理解度の高さを示しています。フランス代表としても各年代別代表を経験し、2023年にA代表デビューを果たしました。2025年3月現在、チェルシーの主力として活躍しており、特にリース・ジェームズの離脱時にはチームの右サイドを支える重要な選手となっています。若くしてクラブと代表の両方で成長を続けるグストは、今後さらなる飛躍が期待される選手です。
8位 ディオゴ・ダロト(マンチェスター・ユナイテッドFC)
4000万€(68億円)
ディオゴ・ダロトは1999年3月18日生まれのポルトガル出身の右サイドバックで、現在はプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドに所属しています。ポルトガルの名門クラブ、FCポルトのユースアカデミーで育ち、2017年にトップチームデビュー。その後、2018年6月にマンチェスター・ユナイテッドへ移籍し、徐々に出場機会を増やしていきました。2020-21シーズンはACミランへレンタル移籍し、セリエAでの経験を積んだ後、マンチェスター・ユナイテッドに復帰。以降、右サイドバックのレギュラーとして活躍し、攻守両面での安定感を示しています。ダロトはスピードと技術を兼ね備えたサイドバックで、高精度のクロスや積極的なオーバーラップが武器。ポルトガル代表としても各年代別代表を経て、2021年にA代表デビューを果たしました。2025年3月現在、マンチェスター・ユナイテッドの主力としてプレーしており、今後のさらなる成長と活躍が期待されています。
7位 リコ・ルイス(マンチェスター・シティFC)
4000万€(68億円)
リコ・ルイスは2004年11月21日生まれのイングランド出身の右サイドバックで、現在はプレミアリーグのマンチェスター・シティFCに所属しています。8歳でマンチェスター・シティのアカデミーに加入し、2021-22シーズンにはU-18チームのキャプテンとしてリーグ優勝に貢献。2022年8月、プレミアリーグ第2節のAFCボーンマス戦でトップチームデビューを果たし、その後、UEFAチャンピオンズリーグのグループステージでも出場機会を得るなど、着実に経験を積んでいます。ルイスはスピードとテクニックを兼ね備えたサイドバックで、戦術理解度が高く、柔軟なプレーができる選手として評価されています。イングランド代表ではU-16からU-21までの年代別代表に選出され、2023年にはA代表にも初招集。2025年2月現在、マンチェスター・シティのトップチームで出場機会を増やし、UEFAチャンピオンズリーグやプレミアリーグの重要な試合でも起用されるなど、チーム内での存在感を高めています。若くしてトップクラブで活躍するルイスは、今後さらなる成長と飛躍が期待される選手です。
5位 ユリエン・ティンバー(アーセナルFC)
4500万€(76億5,000万円)
ユリエン・ティンバーは2001年6月17日生まれのオランダ出身のディフェンダーで、現在はプレミアリーグのアーセナルFCに所属しています。アヤックスのユースアカデミーで育ち、2020年にトップチームデビュー。センターバックや右サイドバックとしてプレーし、2023年7月にアーセナルへ移籍しました。しかし、2023-24シーズン開幕戦のノッティンガム・フォレスト戦で右膝前十字靱帯を損傷し、長期離脱を余儀なくされました。2024年4月にU-21の試合で約8か月ぶりに実戦復帰し、2024/2025シーズンはトップチームへ復帰しています。ティンバーは、対人守備の強さと正確なパスで攻撃の起点になれる選手で、センターバックだけでなく右サイドバックもこなせるユーティリティ性を持っています。オランダ代表ではU-17欧州選手権2018優勝に貢献し、2021年にA代表デビュー。同年のEURO 2020や2022年のワールドカップにも出場し、国際舞台での経験を積んでいます。チームの守備陣の強化に貢献することが期待されています。
5位 ペドロ・ポロ(トッテナム・ホットスパーFC)
4500万€(76億5,000万円)
ペドロ・ポロは1999年9月13日生まれのスペイン出身の右サイドバックで、現在はプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーFCに所属しています。地元クラブでサッカーを始めた後、2015年にラーヨ・バジェカーノのユースアカデミーに入団。その後、2017年にジローナFCと契約し、2018年にトップチームデビューを果たしました。2019年にマンチェスター・シティへ完全移籍しましたが、レアル・バリャドリードやスポルティングCPへレンタル移籍。スポルティングCPでは2020-21シーズンのプリメイラ・リーガ優勝に貢献し、2022年には完全移籍を果たしました。2023年1月にトッテナムへレンタル移籍し、同年7月に完全移籍が発表。攻撃的なプレースタイルが特徴で、高精度のクロスや積極的なオーバーラップが武器。守備でも安定したパフォーマンスを発揮し、戦術理解度の高さが評価されています。スペイン代表としても各年代別代表を経験し、2021年にA代表デビュー。2024/2025シーズンはトッテナムでリーグで28試合に出場し、2ゴール5アシストを記録。今後さらなる成長と活躍が期待される選手です。
4位 ベン・ホワイト(アーセナルFC)
5500万€(93億5,000万円)
ベン・ホワイトは1997年10月8日生まれのイングランド出身のディフェンダーで、現在はプレミアリーグのアーセナルFCに所属しています。サウサンプトンのユースチームを経て、16歳でブライトンのアカデミーに加入。2019-20シーズンにはリーズ・ユナイテッドへレンタル移籍し、チャンピオンシップ優勝とプレミアリーグ昇格に貢献しました。2021年にアーセナルへ完全移籍し、センターバックとして活躍。2022-23シーズンからは右サイドバックへコンバートされ、攻守両面でチームに貢献しています。ホワイトは戦術理解度が高く、ビルドアップ能力に優れた選手で、センターバックとサイドバックをこなすユーティリティ性を持っています。イングランド代表には2021年に初招集され、EURO 2020メンバーにも選出。2025年2月現在、膝の問題で一時離脱していましたが復帰が近いと報じられ、アーセナルとの契約を2028年まで延長。今後もクラブと代表の守備陣を支える重要な存在として期待されています。
2位 アクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマンFC)
6000万€(102億円)
アクラフ・ハキミは1998年11月4日生まれのモロッコ代表の右サイドバックで、現在はパリ・サンジェルマンFC(PSG)に所属しています。8歳でレアル・マドリードの下部組織に入団し、2017年にトップチームデビュー。その後、2018年からボルシア・ドルトムントへレンタル移籍し、攻撃的なプレースタイルで注目を集めました。2020年にはインテル・ミラノへ移籍し、セリエA優勝に貢献。2021年にPSGへ加入し、スピードと攻撃力を生かしたプレーでチームの主力選手として活躍しています。代表では2016年からモロッコA代表に選出され、2022年ワールドカップではモロッコを史上初のベスト4へ導く活躍を見せました。攻守両面で貢献できる現代的なサイドバックとして評価されており、2023年にはアフリカ年間最優秀選手賞の最終候補に選ばれるなど、世界的な評価も高まっています。2024年にはPSGで公式戦100試合出場を達成し、今後もクラブと代表でさらなる飛躍が期待される選手です。
2位 ジュール・クンデ(FCバルセロナ)
6000万€(102億円)
ジュール・クンデは1998年11月12日生まれのフランス出身のディフェンダーで、現在はラ・リーガのFCバルセロナに所属しています。FCジロンダン・ボルドーの下部組織で育ち、2018年にトップチームデビュー。その後、2019年にセビージャへ移籍し、2020年のUEFAヨーロッパリーグ優勝に貢献しました。2022年にはバルセロナへ移籍し、センターバックと右サイドバックの両方で活躍。高いスピードと対人守備の強さを誇り、攻撃参加も積極的に行う選手です。フランス代表としては2021年にEURO 2020に出場し、同年のUEFAネーションズリーグで優勝を経験。2024/2025シーズンはリーグで、2ゴール3アシストを記録し、バルセロナの守備の要として活躍。今後もクラブと代表の両方でさらなる飛躍が期待される選手です。
1位 トレント・アレクサンダー=アーノルド(リヴァプールFC)
7500万€(127億5,000万円)
トレント・アレクサンダー=アーノルドは1998年10月7日生まれのイングランド出身の右サイドバックで、現在はプレミアリーグのリヴァプールFCに所属しています。6歳でリヴァプールのアカデミーに入団し、2016年にトップチームデビュー。2018-19シーズンにはプレミアリーグで12アシストを記録し、DFとしての1シーズン最多アシスト記録を更新。以降、UEFAチャンピオンズリーグ優勝(2018-19)、プレミアリーグ優勝(2019-20)など、数々のタイトル獲得に貢献しています。正確なクロスやパス、セットプレーのキック精度の高さが武器で、攻撃的なサイドバックとして世界的に評価されています。イングランド代表には2018年に初招集され、ワールドカップやEUROにも出場。2024年12月にはスペイン紙がレアル・マドリード移籍の可能性を報じましたが、公式発表はまだなく、今後の動向が注目されています。今後もリヴァプールおよびイングランド代表でのさらなる活躍が期待される選手です。
まとめ
今回の右サイドバック市場価値ランキングは、現代サッカーにおけるこのポジションの進化を反映した結果となりました。かつての右サイドバックは主に守備に特化した選手が多かったものの、現在では攻撃面での貢献が不可欠となり、チームの戦術の中心を担う選手も増えています。
1位に輝いたのは、リヴァプールのトレント・アレクサンダー=アーノルド。市場価値は7500万ユーロ(約127億5,000万円)に達し、右サイドバックとして世界最高クラスの評価を受けています。正確無比なロングパスとクロス、そしてプレーメイク能力の高さはもはや「中盤の司令塔」レベルであり、リヴァプールの攻撃をデザインする存在です。近年はインバーテッド・フルバックの役割も担い、試合のテンポをコントロールする能力がさらに進化しています。
2位には、FCバルセロナのジュール・クンデ(6000万ユーロ/約102億円)がランクイン。もともとセンターバックとしての適性も持つクンデは、守備力の高さと空中戦の強さが際立ちます。バルセロナでは右サイドバックとしても起用されており、攻守両面でバランスの取れたプレーを見せています。
同じく6000万ユーロ(約102億円)で3位に入ったのは、パリ・サンジェルマンのアクラフ・ハキミ。圧倒的なスピードと攻撃力を武器に、サイドからの突破やカットインでゴールに直結するプレーを生み出します。攻撃的な右サイドバックの代表格ともいえる存在であり、今後も市場価値の上昇が期待されます。
4位には、アーセナルのベン・ホワイト(5500万ユーロ/約93億5,000万円)。センターバックとしてもプレー可能な守備の安定感が特徴で、アーセナルの右サイドの堅守を支えています。攻撃面でもボールの持ち運びやパスの精度が向上し、チームのビルドアップにおいて重要な役割を果たしています。
5位には、トッテナム・ホットスパーのペドロ・ポロ(4500万ユーロ/約76億5,000万円)がランクイン。攻撃的なスタイルが特徴で、サイドからの仕掛けや正確なクロスが魅力です。トッテナムではウイングバックとしての役割もこなし、攻撃の起点となることが多く、その市場価値も今後さらに上昇する可能性があります。
このランキングからも分かるように、現代の右サイドバックは、単なるディフェンダーではなく、攻撃の起点となるプレーヤーとしての価値が求められるようになっています。トップクラスの選手たちは、守備力に加え、攻撃面での貢献度、ゲームメイク能力、戦術的な適応力を備えており、その市場価値の高さにも納得できます。また、インバーテッド・フルバックとして中盤の役割も担う選手が増えており、右サイドバックというポジション自体が変革を遂げつつあることもランキングから読み取ることができます。
今後のシーズンや移籍市場では、これらのトップ選手たちがどのような活躍を見せ、市場価値がどのように変動していくのかが大きな注目ポイントです。新たなスター選手が台頭するのか、それとも現在のトップ選手たちがさらに進化し、その座を守り続けるのか。右サイドバックというポジションのさらなる進化と、それを支える選手たちの活躍から、今後も目が離せません。
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